久々に、大学時代のルームメイトに電話をした。
今はすっかり二児のママになってしまったけれど、電話口から聞こえてくる愛くるしい声は相変わらず健在だ。ふと数十年前のあの出来事が蘇った。
私のルームメイトは、とてつもなくかわいらしい女の子だった。文庫本を片手に、ちょっと高いアニメ声で「のぞみっち~」と呼びかけられると、私はもうメロメロだった。同級生のそのアニメ声の少女と、よくご飯を一緒に食べた。おひとり様などという素敵な文化はまだなかったから、沢山つくって分け合って食べた。
私がたぶん人生で初めてハンバーグをまともに作ったであろう日のこと。
分量がわからず、作ってみたら、なんと30個位のハンバーグができた。さすがの私も、一度には食べきれず、ひとつづつ丁寧にラップに包み冷凍庫に大切に保存し、アニメ声のルームメイトに、「適当にたべてね~」と伝えた。
あくる日の朝。早速、ルームメイトがおいしそうに食べている。
子供の成長を見守る母のごとくに、彼女をみつめた後、すっかりハンバーグのことは忘れて、私は青春を謳歌しに外へと繰り出した。
外食続きの日々を過ごした数日後。あのハンバーグを楽しみに帰宅し、冷凍庫を開けた。
あれっ?
あれほどあった肉の塊がみあたらない。
へっ?
状況が飲み込めないわたしは、ルームメイトに、とりあえずハンバーグのありかを聞いた。そしたら、彼女は自分のお中に手をあてて、えへへと笑った。
「だって、のぞみっちのハンバーグおいしいんだもの~(アニメ声)」
ええええええぇ?
確かに、ご自由に食べてね、とは言ったけれど、全部食べるかふつうぅぅぅぅ!?
あのねぇ~、と言いかけたけれど、彼女の幸せそうな笑顔をみると、もう何も言えなかった。
そして、私は彼女と同居している間に、二度とハンバーグを作ることはなくなった。
大学を卒業して間もなく、そのルームメイトは結婚した。
結婚式の友人代表のスピーチで何を話したかって?
それは、もちろんハンバーグ事件でございますわ(笑)
